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似てる!STRIPED STREETシリーズ作品とキシリッシュのCM

片岡昌展をご覧になった方でお気づきになった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

現在放送中の木村カエラさん出演の明治製菓 キシリッシュのCMが片岡昌の作品 STRIPED STREET の発想とそっくりですね!STRIPED STREETは、白黒のストライプの背景の前で、同様に白黒ストライプの人物がパフォーマンスをするというイベントを開催した後に描かれた作品です。そして、まさに、このCM同様に、人物が背景に一瞬とけ込むような視覚効果が得られたとのことです。

偶然の一致でしょうが、こうしたトリックアート的な視覚効果のおもしろさを片岡が先駆的に取り入れていたことが、ここからも伺えるのではないでしょうか?

明治製菓 キシリッシュCM でCMをご覧になれます。是非見比べてみてください!


明治製菓 キシリッシュCM[2010] より

STRIPED STREET(群像)[1982]

STRIPED STREET(立像)[1982]

片岡昌展 デジタルフォトフレームを使った舞台写真展示

池田20世紀美術館で開催中の「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」では、片岡昌の業績をできる限りお伝えするため、美術館の展示としてはかなり多くの作品を展示しています。

劇人形作品の展示については、人形だけでなく、どの様に使われたかがわかる舞台写真もお見せしたいと考えていましたが、展示の量やバランスを考えると、舞台写真を沢山展示することはかなわない状態でした。

そこで、今回トランセンド・ジャパン社のご協力をいただき、デジタルフォトフレームを使った写真の展示を試みています。展示としては多少小さめのサイズになりますが、省スペースで沢山の写真をご覧いただけるのはデジタルフォトフレームならではです。

デジタルフォトフレームは自分で写真を楽しむため、またはパソコンを使い慣れていない両親へ写真をプレゼントするため、等の使い方が提案されている製品ですが、安価で省スペースという特性を生かし美術館や資料館での情報呈示や、お店のPOP代わりとしても活用できるのではないかと思います。会場では使用していない機能ですがBGMの再生や動画の再生など「遊べる」機能もついています。何かユニークな使い方をしている例があったら教えていただきたいとも思います。

関連商品ストアにも デジタルフォトフレーム カテゴリを設けました。会場で使用している製品を紹介しています。製品の詳細は トランセンド・ジャパンの製品ページ をご覧下さい。

クロスオーバー人形/STRIPED STREET 超次元の造形作品 II 片岡昌展 展示紹介(4)


STRIPED STREET (群像)(1982)


STRIPED STREET (立像)(1982)


赤レンガ倉庫(1979)

STRIPED STREET と名付けられたシリーズ作品。 (群像) は白黒のストライプを、そこに人体があるかの様に「曲げて」書き込む事で、立体的な人体の存在を感じさせる平面作品です。一方 (立像) の方は半立体の作品なのですが、立体の人体のストライプが背景のストライプへ溶け込み、遠くから見ると平面の様に見える作品です。

赤レンガ倉庫 は STRIPED STREET に先立って作られたシリーズの作品。こちらは良く知られた横浜の 赤レンガ倉庫 を背景に、まるで「透明な巨人」が立っているかの様に、風景が屈折した様子が描かれています。

この様な表現は、光の屈折を計算して絵を描画する レイトレーシング を活用した現在の 3DCG 技術を使えば、簡単に再現できます。しかし、当時片岡昌はこれらの絵を光学的な実験等を経ず、赤レンガ倉庫の参考写真等だけを元に頭の中だけで光の屈折のシミュレートを行い描いていたそうです。

この事から、片岡は平面作品においても、立体造形で培われた立体物の把握・構成力を強く生かして制作していたと考えられます。一般に平面作品と立体作品は別ジャンルの美術表現と捉えられますが、劇人形や立体作品を見れば一目瞭然の片岡の立体造形力、「近未来計画」シリーズやその他の風刺画といった作品において発揮されている微細なリアリズムと極端なデフォルメを自在にミックスする平面での表現力、これらは片岡の中では1つの能力として鍛えられ、発揮されてきたのかもしれません。実際に、過去の作品シリーズ “クロスオーバー人形展”, “STRIPED STREET”, “近未来計画” は1つの個展で展示されるシリーズ作品の中に、平面と立体の作品が入り交じった物でした。片岡昌の表現は、平面と立体、2次元と3次元という垣根など元々無いかの様に軽々と行き来してみせています。


紹介した作品は、10月5日まで「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」にて展示しています。立体と平面を行き来する、自由な発想から生まれた作品をお楽しみ下さい。

片岡昌展の関連商品コーナー

片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 開催中の、池田20世紀美術館内のショップにて、関連商品コーナーを設けて頂いています。品揃えも7月より、少しづつですが増やしています。

特に、書籍は一般の書店ではあまり見かけない本ばかりで、普段は立ち読みして中身を確認する事ができないと思います。会場にお越しの際は是非書籍を手に取ってみて下さい。

また、Web上にも関連商品ショップ 片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 ストア(Amazon インスタントストア) を設けています。こちらは会場ショップには置けなかったDVDや古本も紹介しております。

さて、当プロジェクトスタッフ Haruka のおすすめ商品は… 全体を表示

リアル・トポロジー 超次元の造形作品I 片岡昌展 展示紹介(3)


裏返るビーナス(1972)


アラ、見てたのね(1972)

写真の「裏返るビーナス」は、人体の上半分と下半分がお腹の所で裏返っている、トリック・アート的な不思議さを感じさせる作品です。上半身と下半身を別々にみれば、一見普通の人体彫刻の様にも見えますが、「裏返っている」お腹の部分を見ると、この立体作品がゴムの様にぐにゃぐにゃと形を変え続ける曲面でできていて、現在はたまたま人体彫刻の様な形状をしているだけ…とも感じられます。「リアル・トポロジー」と呼ばれるこれら立体作品のシリーズは、数学のトポロジーで扱われる「形を自由に変えられる曲面」の様に感じられる非現実的な質感と、西洋彫刻の様に存在感のある写実的な質感を同時に持っています。

同シリーズの「アラ、見てたのね」もやはり、同じ様に中身のない、曲面だけでできた人体をイメージさせます。裸の体をさらに「脱いだ」らそこは何も無い空間だった、というのは見る人をドキッとさせるしかけでもあり、このまま全部脱いだらこの女性はどこへ消えてしまうのか?とSF的な想像力が刺激される作品でもあります。

この他に「ある曲面」では男女のトルソが1つの曲面の表と裏を共有し、また別シリーズの作品「勤め上げし父の肖像」でも形を無機物へ変形させた人体が表現されています。これらの奇妙な変形を伴った人物像は確実に「実在しえない」ものですが、人体の細部の表現が極めてリアルに作られているため、全体として実在感・存在感のあるものとして迫ってくる表現になっています。虚と実という相反する感覚を同時に刺激される所が、これらの作品の魅力の1つといえるでしょう。こういったリアルさを追求した表現を、片岡は「部分リアリズム」と呼んでいます。[片岡昌展カタログ90P]

片岡によれば、「リアル・トポロジー」の「トポロジー」という単語は、これらの作品を見た坂根厳夫氏の発言から借りてきたそうです。坂根厳夫氏は「遊びの博物誌」[1977]の中で「裏返るビーナス」「アラ、見てたのね」など片岡の作品数点を紹介し、こういった立体表現や、古来からある妖怪などのイメージ等が、人体イメージに「数学的操作」を加える事で生まれたと考える事もできるのではないかと述べています。


紹介した作品は、10月5日まで「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」にて展示しています。写真では伝えきれない、立体造形の面白さをご確認下さい。

坂根厳夫氏による片岡昌作品の紹介がある書籍を 片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 ストア にまとめてあります。特に 遊びの博物誌 1, 遊びの博物誌 2 は私も繰り返し読んでいる魅力溢れる本です。版元品切れのため古本でしか手に入らないのですが、値段もお手頃ですので是非読んでみて下さい。

本日8日は人形操作ワークショップとギャラリートークがあります。

本日、8月8日は、人形操作ワークショップとギャラリートークがあります。開始時間は、ワークショップが 11:00〜 と 13:00〜, ギャラリートークが 12:00〜 と 14:00〜 となります。(イベントスケジュール)どのイベントも、開始時間の30分前に伊東駅を出る予定のバスに乗っていただければ(ちょっとギリギリですが)間に合います。

前回の人形操作ワークショップの写真をご紹介します。

人形劇団ひとみ座のスタッフが、手遣い人形、棒遣い人形の仕組みと使い方を解説し、皆様に実際に持って操作していただきます。棒遣い人形のカラクリの面白さと、実演としてお見せする寸劇もご注目下さい。

ギャラリートークでは、片岡昌アーカイブ・プロジェクトのキュレイターと一緒に、見所の解説を聴いたり、ご質問をしていただきながら作品をお楽しみいただけます。

いずはぴ通信に片岡昌展の記事が載りました。

伊豆情報サイト イズハピ! 内、「いずはぴ通信」にて、片岡昌展をとりあげていただきました。企画展オープン初日にお越し下さり、熱心に作家取材をして頂きました。展覧会の内容を端的に楽しくご紹介頂き、素晴らしい記事です。是非ご一読下さい。

関連リンク:伊豆情報サイト イズハピ!

片岡昌展『ひょっこりひょうたん島』の展示替え一部中止です。

以前お知らせした、 片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 での『ひょっこりひょうたん島』の人形展示替えですが、 7月23日-7月24日, 8月2日-8月8日 の展示替えが、都合によりなくなりました。8月24日まで、通常展示となります。

この間、通常展示にはないオリジナルの人形の入れ替え展示(ガラクータ,アルセーヌ・クッペパン,ブル元帥,しゅう長,シエラザード)を予定していました。これらをご覧になる予定を考えていた方々には、大変申し訳なく思います。

これら5つのオリジナル版人形も含め、 8月25日-8月31日『オリジナル版 展示強化週間』 ではオリジナル版の人形を一挙に展示しますので、こちらでご覧頂きたいと思います。

片岡昌展 会場での写真撮影OKです(フラッシュはNG)

タイトルの通りです。

片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 開催中の池田20世紀美術館では、館内で写真を撮影していただけます。
ただし、フラッシュを使用しての撮影はご遠慮下さい。作品保護のため、ご協力お願いします。

いい写真が撮れましたら、ブログ等でご紹介下さい!これまでに、以下のブログでご紹介頂きました。

※検索して見つかったブログを紹介させて頂いています。他にもブログに写真をアップいただいている方、お知らせ下さい。

ひょっこりひょうたん島の劇人形(回転体と3DCG) 片岡昌展 展示紹介(2)


曲線と、軸で回転させた回転体

劇人形は撮影中に壊れてしまう事もあり、同じ物をたくさん作る必要があります。「ひょっこりひょうたん島」は登場人物が多く、また月〜金の帯での放送であったため、その人形制作もハードなスケジュールを要求されました。そこで、人形の基本的な形状の作成を外注できる様にするため、木をろくろで削った「回転体」という幾何学的なカタチを組み合わせたデザインを使う事が考案されました。

自由にデザインした立体的な形状を平面の設計図で正確に伝えるのは困難な上、発注先の技術の上手・下手によって結果にブレが生じてしまいます。一方、平面の回転体であれば、回転軸に対する曲線を示すだけで、どこに発注しても正確に同じ形状の立体を作らせる事ができました。

片岡昌によれば、これら「ひょうたん島」の造形に関して、後の3次元コンピュータ・グラフィックス (以下 “3DCG”) と似ている、という指摘をされた事があるそうです。これはどういった理由でしょうか。


回転体等の組み合わせでできた3DCGキャラクター例
(左)フジテレビ ウゴウゴルーガ「おやじ」
(ウゴウゴルーガ公式サイトより引用)
(右)フジテレビ 平成教育委員会「勉強小僧」
(平成教育委員会Webサイトより引用)

3DCGでは、表示される物体は全て、その形状や光のあたり方等が数学的に「計算可能」である必要があります。現在はコンピュータの進歩により、どんなに複雑な形状でも「計算」できる様になったといえますが、80年代後半から90年代前半までの初期の3DCGにおいては、単純な数式で表せる形状しか「計算」する事ができませんでした。具体的には、多面体や楕球体、多角錐、三角形を組み合わせた形状(ポリゴン)、そして回転体などが「単純な数式で表せる」単純な形状でした。初期の3DCG作品をよく見るとこれら単純な形状の要素を組み合わせた形状となっている事がわかると思います。

こちらも楕球体や回転体からなるキャラクター
JOHN LASSETER 他,”The Adventures of André and Wally B.” 1984
後にピクサーを作ったスタッフらによる初期3DCGアニメーション

3DCGでは直方体やポリゴン等回転体以外の形状も利用可能でしたが、回転体はなめらかな曲面を持ち、比較的自由に形を作る事ができる利点があったため、キャラクターの姿を表現する場合などは、特に回転体が利用される事が多かったと言えます。(また、実際の3DCGではこれらの形状を曲線に沿って「曲げる」事でより豊かな形状を作り出しています)

つまり、「ひょうたん島」の場合は「単純な図面で正確に形状を伝える事ができる形」、3DCGの場合は「単純な数式で正確に形状を計算できる形」として回転体を採用した、という共通点があった事がわかります。


「ドタバータ」(オリジナル版)
頭のパーツは回転軸をやや傾けている

「ひょうたん島」の人形をよく見ると、回転体というシンプルなカタチでも、曲線のデザインの仕方、その回転軸をどの角度で合わせるか、といったバリエーションにより、幅広いデザインで親しみやすいキャラクターが生み出されています。今回の企画展の展示を通してご覧いただけば、こういった立体的なデザインセンスも、片岡の卓越した立体造形力に裏打ちされた物である事がわかると思います。3次元空間にいかに「存在感のあるキャラクター」をデザインするか、という視点では、現在の複雑な形状が表現できる様になった3DCGのデザインにおいても参考となる点もあるのではないでしょうか。

ご紹介した人形は、10月5日まで「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」にて展示しています。是非ご来場下さい。

ひょっこりひょうたん島の関連商品は。 片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 ストア(Amazonからの購入) よりどうぞ。