クロスオーバー人形/STRIPED STREET 超次元の造形作品 II 片岡昌展 展示紹介(4)
STRIPED STREET と名付けられたシリーズ作品。 (群像) は白黒のストライプを、そこに人体があるかの様に「曲げて」書き込む事で、立体的な人体の存在を感じさせる平面作品です。一方 (立像) の方は半立体の作品なのですが、立体の人体のストライプが背景のストライプへ溶け込み、遠くから見ると平面の様に見える作品です。
赤レンガ倉庫 は STRIPED STREET に先立って作られたシリーズの作品。こちらは良く知られた横浜の 赤レンガ倉庫 を背景に、まるで「透明な巨人」が立っているかの様に、風景が屈折した様子が描かれています。
この様な表現は、光の屈折を計算して絵を描画する レイトレーシング を活用した現在の 3DCG 技術を使えば、簡単に再現できます。しかし、当時片岡昌はこれらの絵を光学的な実験等を経ず、赤レンガ倉庫の参考写真等だけを元に頭の中だけで光の屈折のシミュレートを行い描いていたそうです。
この事から、片岡は平面作品においても、立体造形で培われた立体物の把握・構成力を強く生かして制作していたと考えられます。一般に平面作品と立体作品は別ジャンルの美術表現と捉えられますが、劇人形や立体作品を見れば一目瞭然の片岡の立体造形力、「近未来計画」シリーズやその他の風刺画といった作品において発揮されている微細なリアリズムと極端なデフォルメを自在にミックスする平面での表現力、これらは片岡の中では1つの能力として鍛えられ、発揮されてきたのかもしれません。実際に、過去の作品シリーズ “クロスオーバー人形展”, “STRIPED STREET”, “近未来計画” は1つの個展で展示されるシリーズ作品の中に、平面と立体の作品が入り交じった物でした。片岡昌の表現は、平面と立体、2次元と3次元という垣根など元々無いかの様に軽々と行き来してみせています。
紹介した作品は、10月5日まで「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」にて展示しています。立体と平面を行き来する、自由な発想から生まれた作品をお楽しみ下さい。