片岡昌アーカイブ・プロジェクト > 劇人形作品

カテゴリ: 劇人形作品

人形劇団ひとみ座「AKIRAのひとみ 〜 片岡昌を偲ぶ4days」開催のお知らせ

人形劇団ひとみ座 により、片岡昌に関するイベントが4日間に渡り開催されます。昨年、ひとみ座主催の追悼イベントとしてご紹介していたものですが、追悼一辺倒ではなく4つの側面から片岡の制作・足跡を紹介するものになります。期間中は作品の展示に加え、ひょっこりひょうたん島, 人形劇, ジャズ, 立体・平面作品 と4つの面で、片岡と共に仕事をしたり懇意であったゲストをお呼びしての講演が行われます。

AKIRAのひとみ 〜 片岡昌を偲ぶ4days

場所: 人形劇団ひとみ座 元住吉駅(東急東横線)よりバス10分/徒歩25分 (ひとみ座公式サイトのアクセス情報, Google地図)
会場オープン時間:

  • 2月8日[土] 15:00〜17:00
  • 2月9日[日] 14:00〜17:00
  • 2月15日[土] 14:00〜17:00
  • 2月16日[日] 14:00〜17:00

会費: 無料
展示(4日間共通): ひとみ座内 第1スタジオ, 第2スタジオ, 小稽古場 に劇人形作品, 立体・平面作品を展示します。
講演内容(ひとみ座第1スタジオ):

  • 2月8日[土] 15:00〜16:00 ひょっこりひょうたん島を語る会
    ゲスト: 武井博(元NHKディレクター), 伊藤悟(ひょうたん島ファンクラブ代表)
  • 2月9日[日] 14:00〜15:30 劇人形を語る会
    ゲスト: おおすみ正秋(演出家), 木村繁(演出家・人形劇団むすび座), 渡辺真知子(人形劇団プーク代表), 伊東史朗(演出家・人形劇団ひとみ座団友)
  • 2月15日[土] 14:00〜15:30 片岡はジャズが好きだった – Jazzセッションとトーク
    ゲスト: 翠川敬基(チェロ奏者), 藤川義明(サックス奏者)
  • 2月16日[日] 14:00〜15:30 片岡昌 夢のつづき – 超次元アートの世界を語る
    ゲスト: 稲木秀臣氏(造形作家), 丸山あつし(造形作家), 相馬秀夫(デジタルアーティスト), 山川靖夫氏(画家・JAALA美術家会議事務局長), 遠藤琢郎(演出家・横浜ボートシアター代表)

人形劇団ひとみ座公演「美女と野獣」

人形劇団ひとみ座の新作人形劇「美女と野獣」が、2014年2月1,2日に上演されます。本日チケット発売日です。

人形劇団ひとみ座は過去4回にわたりこの作品の人形劇化を手がけています(末尾に作品データあり)。2010年の池田20世紀美術館の企画展で、美女「ベル」と野獣「ベトゥ」の展示や、ワークショップでの操作風景をご覧になった方もいると思います。今作の人形はその1975,1976年版をベースにしたリニューアル・バージョンです。片岡は野獣「ベトゥ」の新たなデザインと人形制作の監修、舞台美術の原画を担当し、人形劇の仕事として最後に関わった作品となりました。

人形劇団ひとみ座公演「美女と野獣」

人形劇団ひとみ座の「美女と野獣」紹介ページ
原作: J・L・ド・ボーモン, 脚本:宇野小四郎・伊東史朗, 演出:伊東史朗, 人形美術:片岡昌・高橋ちひろ
日時: 2014年2月 1日[土]14:00 / 18:00 / 2日[日]14:00
場所: 県民共済みらいホール 横浜市桜木町/みなとみらい (地図, Google地図)
料金: 前売2000円, 当日2300円, ひとみ座倶楽部会員1800円 全席指定 4歳以上有料
チケット予約: 人形劇団ひとみ座(電話 044-777-2225 または Webから), CNプレイガイド, セブンチケット セブンコード:026-467, Confetti, 横浜読売プレイガイド

資料: 人形劇団ひとみ座による「美女と野獣」人形劇化作品

1954年 「美女と野獣」脚本・演出:宇野小四郎, 人形美術:片岡昌
1968年 「ベルとまもの」脚本・演出:須田輪太郎, 人形美術:高橋恒喜
1975年 「美女と野獣」脚本:クレイ, 潤色:須田輪太郎, 人形美術:片岡昌
1976年 「美女と野獣」(学校公演向け改訂)脚本:宇野小四郎, 演出:森元勝人, 人形美術:片岡昌

[片岡昌展]『オリジナル版展示強化週間』終了、明日は水曜休館、明後日より通常展示です。

片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』、『ひょっこりひょうたん島 オリジナル版 展示強化週間』(写真)は本日8月31日で終了、明日9月1日は休館日で、2日から通常展示となります。
会場の池田20世紀美術館は、7,8月は休館日無しで開館しておりましたが、9月からは水曜日休館となります。ご注意下さい。展示もあと1ヶ月!今回見逃すとなかなか見る機会の無い作品も沢山ありますので、皆様どうぞお越し下さい。伊東は東京方面の方も日帰りで十分楽しめる立地です。意外と近い、伊東の片岡昌展【首都圏向け記事】 をご参考にどうぞ。

「ひょっこりひょうたん島 オリジナル版展示強化週間」と舞台版「ひょうたん島」

昨日お知らせした、『ひょっこりひょうたん島 オリジナル版 展示強化週間』始まりました。写真をアップします。入れ替え内容の詳細は、昨日の記事をご覧下さい。

この展示替えで入れ替わったリメイク版の人形は、福島での人形劇団ひとみ座公演「ひょっこりひょうたん島 泣いたトラヒゲの巻」で使用されます。この舞台版オリジナルストーリーの「ひょうたん島」、脚本はもちろん井上ひさし・山元譲久で、テレビオリジナル版の声優達の吹き込んだテープにあわせて上演されます。ひょうたん島ファンの方は是非どうぞ。詳細は 展示・公演予定のページ や、 主催:こむこむによる情報 をご覧下さい。

[片岡昌展]明日より『ひょっこりひょうたん島 オリジナル版 展示強化週間』です。

開催中の片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』、明日8月25日から8月31日まで『ひょっこりひょうたん島 オリジナル版 展示強化週間』展示替えを行います。


ドン・ガバチョ
左からオリジナル,リメイク

以下の展示がなくなります。(「ひょっこりひょうたん島 泣いたトラヒゲの巻」福島公演のため)

  • リメイク版 トラヒゲ,ガバチョ,サンデー,ダンディ,ムマモメム
  • リメイク版 ハカセ,チャッピ,ダンプ,テケ,プリン,キッド,ライオン
  • リメイク版 パトラ,ペラ,ルナ
  • リメイク版 ガラクータ,トーヘンボク,ドタバータ,ヤッホー

替わりに、以下のオリジナル版の人形をご覧頂けます。

  • ドン・ガバチョ,トラヒゲ (通常時も展示中)
  • ライオン
  • ガラクータ,トーヘンボク,ドタバータ,ヤッホー
  • パトラ,ペラ,ルナ (通常時も展示中)
  • しゅう長(ライオン王国シリーズ)
  • ピッツ長官(ブルドキアシリーズ)
  • ブル元帥(ブルドキアシリーズ)
  • アルセーヌ・クッペパン(魔女リカシリーズ)
  • マリー(通常時も展示中)
  • ボスケ王(アンコロピン王国シリーズ)
  • ジョウ(グッバイジョウシリーズ)
  • パット・ロール(グッバイジョウシリーズ)
  • シエラザード(アルカジル王国シリーズ)
  • アノネ(ウクレレマン・ダンシリーズ)
  • ドン・キホーテ(カンカン王国シリーズ)
  • マーガレット・バッツィドール(ガン・マンシリーズ)

オリジナル版はダメージの激しい人形もありますが、なかなか見る機会のない懐かしいキャラクター達をお楽しみ下さい。

まだお読みでない方は、解説記事 ひょっこりひょうたん島の劇人形(リメイク版,オリジナル版,パイロット版) 片岡昌展 展示紹介(1) もどうぞ。パイロット版の人形は常時展示しております。

シュルレアリズム的魅力?イメージの借用による人形美術 片岡昌展 展示紹介(5)

片岡昌は劇人形を制作する際に、物語とは関わりのないものからデザインの発想を得る事が多くあります。異質なものを自在に組み合わせる事で新しい表現を生み出すアイデアは、シュールレアリズムの様でもあります。


天守物語(1998)

天守物語(1998)

泉鏡花の描いた幻想的な世界を、「海外から見た日本の姿」ジャポニズムのイメージで描き出しています。カラフルな着物が艶やかで絢爛な世界を生み出しています。


マクベス(1961)

マクベス(1961)

シェイクスピアの「マクベス」を、アフリカのプリミティブアート・仮面などに着想を得たデザインの人形達に演じさせています。人の形に限定されない面白さと、人形のモノとしての存在感が強調されています。


マクベス(2009)

マクベス(2009)

2009年版の「マクベス」は再演やリメイクではなく、全く新しい演出が試みられました。登場人物達は虫の姿をしており、魔女が人間の運命を弄ぶ様子を、虫同士を殺し合わせて遊ぶという表現に重ね合わせています。

1961年の「マクベス」は演出の清水浩二氏の発案がきっかけで、従来の人形劇像を裏切るミステリアスでスタイリッシュな人形が作成されました。人形劇ならではの象徴的な演出が多数盛り込まれた、実験的な舞台であったそうです。一方2009年の「マクベス」では、登場人物を虫として表現するアイデアは片岡の発想で、そこから演出の方向性が決まっていったそうです。演出と人形美術が互いに影響を与え合う関係にあり、人形劇においては特に両者の絡み合いは深いものだと言えます。


紹介した劇人形は、10月5日まで「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」にて展示しています。

他に、同展の「人形倉庫」コーナーにある人形から同様の試みが行われている人形を紹介すると…「かもめ(1975)」はチェホフの戯曲を、風刺漫画(ポンチ絵と呼ばれた頃の海外の風刺漫画)をイメージしたシニカルなデザインの人形で表現しています。また、作品の設定に沿いながらイメージを借用してきた例として、日本神話を元にした「おおあなむちの冒険(1969)」では土偶風のデザインを、シェイクスピア劇「夏の夜の夢(1993)」ではギリシャ彫刻風のデザインを採用しています。

参考リンク

ひょっこりひょうたん島の劇人形(回転体と3DCG) 片岡昌展 展示紹介(2)


曲線と、軸で回転させた回転体

劇人形は撮影中に壊れてしまう事もあり、同じ物をたくさん作る必要があります。「ひょっこりひょうたん島」は登場人物が多く、また月〜金の帯での放送であったため、その人形制作もハードなスケジュールを要求されました。そこで、人形の基本的な形状の作成を外注できる様にするため、木をろくろで削った「回転体」という幾何学的なカタチを組み合わせたデザインを使う事が考案されました。

自由にデザインした立体的な形状を平面の設計図で正確に伝えるのは困難な上、発注先の技術の上手・下手によって結果にブレが生じてしまいます。一方、平面の回転体であれば、回転軸に対する曲線を示すだけで、どこに発注しても正確に同じ形状の立体を作らせる事ができました。

片岡昌によれば、これら「ひょうたん島」の造形に関して、後の3次元コンピュータ・グラフィックス (以下 “3DCG”) と似ている、という指摘をされた事があるそうです。これはどういった理由でしょうか。


回転体等の組み合わせでできた3DCGキャラクター例
(左)フジテレビ ウゴウゴルーガ「おやじ」
(ウゴウゴルーガ公式サイトより引用)
(右)フジテレビ 平成教育委員会「勉強小僧」
(平成教育委員会Webサイトより引用)

3DCGでは、表示される物体は全て、その形状や光のあたり方等が数学的に「計算可能」である必要があります。現在はコンピュータの進歩により、どんなに複雑な形状でも「計算」できる様になったといえますが、80年代後半から90年代前半までの初期の3DCGにおいては、単純な数式で表せる形状しか「計算」する事ができませんでした。具体的には、多面体や楕球体、多角錐、三角形を組み合わせた形状(ポリゴン)、そして回転体などが「単純な数式で表せる」単純な形状でした。初期の3DCG作品をよく見るとこれら単純な形状の要素を組み合わせた形状となっている事がわかると思います。

こちらも楕球体や回転体からなるキャラクター
JOHN LASSETER 他,”The Adventures of André and Wally B.” 1984
後にピクサーを作ったスタッフらによる初期3DCGアニメーション

3DCGでは直方体やポリゴン等回転体以外の形状も利用可能でしたが、回転体はなめらかな曲面を持ち、比較的自由に形を作る事ができる利点があったため、キャラクターの姿を表現する場合などは、特に回転体が利用される事が多かったと言えます。(また、実際の3DCGではこれらの形状を曲線に沿って「曲げる」事でより豊かな形状を作り出しています)

つまり、「ひょうたん島」の場合は「単純な図面で正確に形状を伝える事ができる形」、3DCGの場合は「単純な数式で正確に形状を計算できる形」として回転体を採用した、という共通点があった事がわかります。


「ドタバータ」(オリジナル版)
頭のパーツは回転軸をやや傾けている

「ひょうたん島」の人形をよく見ると、回転体というシンプルなカタチでも、曲線のデザインの仕方、その回転軸をどの角度で合わせるか、といったバリエーションにより、幅広いデザインで親しみやすいキャラクターが生み出されています。今回の企画展の展示を通してご覧いただけば、こういった立体的なデザインセンスも、片岡の卓越した立体造形力に裏打ちされた物である事がわかると思います。3次元空間にいかに「存在感のあるキャラクター」をデザインするか、という視点では、現在の複雑な形状が表現できる様になった3DCGのデザインにおいても参考となる点もあるのではないでしょうか。

ご紹介した人形は、10月5日まで「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」にて展示しています。是非ご来場下さい。

ひょっこりひょうたん島の関連商品は。 片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 ストア(Amazonからの購入) よりどうぞ。

ひょっこりひょうたん島の劇人形(リメイク版,オリジナル版,パイロット版) 片岡昌展 展示紹介(1)


ドン・ガバチョ
左がオリジナル版

魔女 ルナ
左がオリジナル版

日本中の子供たちが熱狂したと言われる人形劇、ひょっこりひょうたん島。今回の展示では91年より放送されたリメイク版の人形に加え、なかなか見られる機会のない60年代のオリジナル版と、パイロット版の撮影で使われた人形も展示します。

1964年〜1969年にかけて放送された「ひょっこりひょうたん島」オリジナル版は、当時高価だったビデオテープを「上書きして使い回し」していたため、再放送ができない「幻の番組」でした。

その後、番組のファン達の期待に応える形で、リメイク版が1991年〜1996年に制作・放送されました。人形もこの放送のために再制作され、いくつかの人形はより洗練された形にアレンジされています。例えば「ドン・ガバチョ」(写真上、オリジナル版は帽子の欠け、ヒゲの歪み有)では、手や目の形がマイナーチェンジされた程度ですが、魔女ルナ(写真中、オリジナル版は髪の毛の劣化有)では髪色・肌色の色調、手の形の変更に加え、顔のカラクリを動かす為の切れ目をうまく隠し、より妖しい美しさを持つ魔女を生み出しています。(女性のキャラクターはより美人になる様変更された傾向があります)

今回の展示では、ひとみ座に現存した物については「オリジナル版」「リメイク版」の両方を展示しています。是非、デザインの変化をよく観察してみて下さい。


パイロット版 ハカセ
目と足の部分欠け

また、オリジナル版に先立って制作された「パイロット版」の人形も展示しています。実際に制作されたものよりも小さいサイズですが、回転体を基本としたデザインや、カラクリを使い動きの面白さを狙った人形を作る方針ができあがっている点が注目できます。

ご紹介した人形は、10月5日まで「片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』」にて展示しています。是非ご来場下さい。

DVD NHK人形劇クロニクルシリーズVol.2 ひとみ座の世界 ひょっこりひょうたん島NHK人形劇クロニクルシリーズVol.5 新諸国物語 笛吹童子 ひとみ座の世界2 には、オリジナル版の現存する映像が全て収録されています。オリジナル版をもう一度見たい方は是非こちらをどうぞ。

また、リメイク版は、全話がDVD-BOXとして入手できます。 片岡昌展 超次元アートと『ひょうたん島』 ストア(Amazonからの購入) よりどうぞ。